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PILLAR

物件データ/

所在地  : 東京都文京区
用途   : 店舗(ネイルサロン)
竣工年  : 2024年9月
施工   : THモリオカ /森岡繁弥
構造   : 木造(パイプスペース)
規模   : 地上4階(2階のみ) 

 

(C)中島悠二

空白による分節

 この計画は元々倉庫として使われていた部屋を個室のネイルサロンとして利用するにあたり、トイレと洗面をパウダールームのようにきれいに整えたいという相談から始まった。私たちが現地に行った時には依頼主によって壁や天井がきれいに塗られていた。光が入り込む前面道路側は施術室として利用する予定で、2間×2間の部屋としての体裁を保っているが、その他を含めた全体は部屋と廊下の中間のような細長い筒状の空間であった。施術室の対極にはトイレと業務用のシンクが置かれ、途中で間仕切ると窮屈さを感じるし、一体にするとどこにいても全体を見通せてしまい、拠り所が無いように感じる。そこで水廻りを整えることで、筒状の空間を施術室、待合室、パウダールームの3つにゆるやかに分節する在り方を検討することにした。

 まず、パウダールームのために洗面の位置をトイレ横から移動させる。その際に生じる配管のパイプスペースを、飾り棚やベンチとなるように肥大化させ、そのまま既存躯体の柱型と同じ寸法で入口横に柱のように立ち上げた。この一連のパイプスペースは、新しく製作した木建具と同じく木の素材で統一して、ハードな印象の既存空間に柔らかい印象を与えている。柱のトイレ側には既存の要素には無い丸みを帯びたプロポーションの洗面と鏡を象徴的に取り付け、パウダールームとして彩っている。柱を施術室側から見ると、パウダールームと待合室の間仕切りとして機能しており、ときに待合室や廊下の袖壁であり、飾り棚であり、洗面室であり、と多面的な機能を持つ。

 一方でこの柱は、既存壁面の表層に見られたわずかな段差を既存と擬態させるように施したことで、既存との一体性を孕みながら、何にも属していない奇妙な空白としても在る。それは象徴的な店舗のアイコンとして拠り所のなかった筒状の空間のシークエンスに焦点を作り出している。

 小さな計画の限られた操作でも、空間の中に一つの重心を作ることができれば、物同士の関係性は繋がり、全体が紡がれていくはずである。それはこの部屋の内だけに限らず、関係性は持続し、店舗のアルミドアを模した入口の木建具を越え、隣接する依頼主の住居とも繋がっていき、生活が彩られていくことを期待している。

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(c)archidivision

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